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心理学コラム

心の病の診断マニュアルDSM-5について

アメリカ精神医学会が作成したDSM-5(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders:DSMの第5版)の日本語訳が先月発刊されました。DSM-5とは精神科医やカウンセラーが心の病の診断名を決めるためのマニュアルブックです。DSM-Ⅰが1952年に刊行され、その後改訂が繰り返されており、2000年のDSM-4TR(改訂版)から13年ぶりにDSM-5が作られたのです。しかし、前回のDSM-4と比べて今回のDSM-5は、アスペルガー障害という言葉が無くなったことだとか、多少の細かい変更があったものの全体としてそれほど大きな変革はなされていないという感じです。

そもそも心の問題はその根本的な生物学的な原因がほとんどまったく分かっておらず、今回のDSM-5もやはり表面に表れている主観的な症状だけで心の病のカテゴリーを区分しているだけのものです。
医学が飛躍的に発達したといわれていても身体的な病気についてまだ分からないことが多いわけですが、それ以上に心の問題は分からないことばかりで、現代の精神医学だとか心理学だとかいうものは未だ原初的な段階にあると言わざるを得ません。
さらにまた、DSMの編纂のための社会的背景にも疑問が残ります。アメリカではオバマケアが未だ実施されず、日本の国民皆保険のようなものがありません。高齢者や貧困層以外には公的な保険金の支払い制度がないために、民間の保険会社の保険に加入するわけですが、その保険金の支払の基準になるものがDSMなのです。そのためにDSMの編纂には保険会社の思惑がからむものだとされ、また、製薬会社が向精神薬を売りさばくために都合のいいように診断名が作られているのではないかというような批判があるのです。
DSM-5の解説本である「精神疾患診断のためのエッセンス DSM-5の上手な使い方」の中でDSM-4に比べて精神疾患の診断基準が引き下げられてしまったことから、その著者であるアレン・フランセスは「DSM-5はさらなる過剰診断と過度な薬の使用に門戸を開け放ってしまったのである」と嘆いているのです。

 

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