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新海誠監督「天気の子」のユング的解釈
- ■2019/08/20 新海誠監督「天気の子」のユング的解釈
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舞台はオリンピックを一年後に控える今年2019年8月の東京。
夏にも関わらず長雨が降り続き、さらには雪が降ってくるという異常気象の設定。
アニメーションでよくここまで表現できたなと驚いてしまうリアルな雲、水滴の表情、湿度感…
それから歌舞伎町などの街並みの細かい描写にも感服します。
前作の「君の名は。」については、ユング心理学的に説明(2016.12.21~22)しました。
今回の作品もまた…
映画はあまり理屈では考えずに、フィーリングで楽しめばいいんだと言われてしまえば、確かにそうですが…
一応参考までにということで…
ユングのいう集合的無意識内には元型という万人共通のイメージやシンボルを生み出す鋳型みたいなものがあるとされます。
タイ焼きの焼き型みたいな…
その元型の一つに「永遠の少年」というものがあります。
島から家出をしてきた帆高と、雨を晴れに変える不思議な力をもつ陽菜は内なる「永遠の少年」
誰しも、大人になっても思春期のままの気持ち、インナーチャイルドと呼ばれるものが心の深いところに多かれ少なかれあるものです。
そのような二人の主人公だから、多くの大人が観ても共感できる…
そして、男の中には女性性・アニマ、女の中にも男性性・アニムス(これらも元型)があるもの。
だから、二人の主人公は一人の人間の中の二面性…
「天気の子」はユング生涯のテーマであった自己統合の物語か?
雨の中に混じって魚(らしきもの)が天から降ってくるというシーン。
シンクロ、パラレルワールドといったことを扱った村上春樹の「海辺のカフカ」にもやはり空から魚が降ってくる個所があります。
貴船神社の逆さ滝みたい…一度海から吹き上げたものが、さらに地上に落下する…
その中で飛び跳ねる魚とは…
もしからしたらこれは救いの象徴???
キリスト教のシンボルは初期においては十字架ではなく魚[ギリシア語のイクトゥス(イエス・キリスト・神の・子・救い主の五つの頭文字を合わせたもの)だったから…
ユングは「アイオーン」という著作の中でそのあたりを錬金術を踏まえて説明している…
自ら決心して人柱となり、東京の長雨を晴天に変えた陽菜は、雲の中で魚に囲まれている…
しかし、それは社会のための自己犠牲にすぎないのか…
本来の自分らしい生き方を求めて帆高は陽菜を下界に引き戻す…
そして、結末は今までのアニメにはないもの…
洪水のようにすべてを飲み込む悪魔的な元型グレートマザーからの内面的な解放を意図しているのか…
現実的に今の気候は狂っているような気がするのでこの物語はリアルにかんじられる。
ちょっと深読みしすぎたかもしれませんが、それだけ内容のある作品だということです。
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