PTSDとは?種類や症状とカウンセリングの有効性などを解説
「PTSDにカウンセリングは有効?」
「PTSDの判断基準や原因・症状について知りたい」
「そもそもPTSD(心的外傷後ストレス障害)とは?」
何かとストレスの多い現代、カウンセリングのハードルは以前よりも下がりはしましたが、まだまだ行き届ききっていないことも確かです。
本記事では、PTSDに関する冒頭の疑問について解説していきます。
PTSDに悩む方やカウンセリングを検討している方は、ぜひ最後までご覧ください。
PTSD(心的外傷後ストレス障害)とは
PTSDとは心的外傷後ストレス障害とも呼ばれる後天性の疾患、病態です。
生命を脅かすほどの恐怖と無力感を経験し、その経験によってさまざまな身体的・精神的な症状が現れることを指します。
なお、PTSDと呼ばれるのは症状の持続期間が1ヶ月を越える場合であり、1ヶ月以内の場合はASD(急性ストレス障害)という風に呼称が区別されています。
PTSDとはトラウマ体験の後の後遺症が続いてしまう状況のことなのです。
PTSDの判断基準
PTSDの判断基準は、以下の3つです。
- 原因として考えられる心的外傷体験がある
- PTSDの症状が発現している(症状の詳細は後述)
- 発現した症状の持続期間が1ヶ月以上である
PTSDの種類
一口にPTSDといっても、その種類は以下の2つに分類されます。
- 単純性PTSD
- 複雑性PTSD
それぞれの特徴を、比較しながら確認してください。
単純性PTSD
単純性PTSDは、タイプⅠのトラウマによって引き起こるPTSDです。
タイプⅠのトラウマとは、単発で起こるトラウマであり、交通事故・地震などの自然災害が当てはまります。
薬物療法や心理療法が有効です。
複雑性PTSD
複雑性PTSDは、タイプⅡのトラウマによって引き起こるPTSDや、単純に「単純性PTSDに分類されないPTSD」を指します。
タイプⅡトラウマのトラウマとは、長期間繰り返し遭遇することで起こるトラウマを指します。
長期間に及ぶ虐待、DV、いじめ、カルト集団でのマインドコントロールなどが当てはまります。
現在のPTSD研究は単純性PTSDに関するものが多いですが、単純性PTSD以外のPTSDはすべて複雑性PTSDといっていいでしょう。
PTSDの原因
PTSDに陥る詳しいメカニズムは研究途中ですが、生命を脅かすほどの恐怖と無力感を経験することが直接の原因になっています。
PTSDは、生か死かの極限状態にさらされたベトナム戦争の帰還兵の多くが、帰還後も無力感や絶望感を訴えたことから注目が集まりました。
日本では、阪神淡路大震災や地下鉄サリン事件をきっかけにPTSDが注目されるように。
ここで重要視されたのが、アウトリーチ(相談室でクライエントを待つだけでなく、臨床心理士が被災地などに直接出向き、積極的に関わっていくこと)です。
このアウトリーチによって、PTSDの早期発見と介入が可能となりました。
患者が、PTSDの症状は誰でも起こり得る反応と知り、早期に適切な治療を受けることにより、慢性化と深刻化を予防できます。
PTSDの症状
次に、PTSDの症状について見ていきましょう。
一般的には、以下の4つが挙げられます。
- 再体験(フラッシュバック)
- 回避
- 否定的感情と認知
- 過覚醒
それぞれ詳しく解説していきます。
なお、これら症状はすべてが発現するわけではありません。
個人差があることに留意してください。
再体験(フラッシュバック)
まず1つ目の症状は「再体験」です。
フラッシュバックとも呼ばれ、もっとも知られるPTSDの症状ではないでしょうか。
これは、心的外傷体験を受けたときの状況が自らの意志とは無関係に想起され、夢に見たり、今現実に起こっているかのように感じられてしまうことです。
たとえば、何の気なく歩いていたり人と話していたりするときに、急に意識が3.11東日本大震災での心的外傷体験最中にタイムスリップしたかのように、津波が押し寄せてくる恐怖を再体験してしまいます。
回避
次に紹介する症状は「回避」です。
これは、心的外傷体験に関係する思考や感情、場所や人物を避けて、心的外傷から目をそむけることを指します。
周囲への関心が薄くなり、肯定的感情が少なくなる点が特徴です。
たとえば、以下のような事例が挙げられます。
- 電車で心的外傷体験を受けた人が、以後電車に乗れなくなる
- 心的外傷に怯え、日常生活において好奇心を持つことが怖くなる・持てなくなる
否定的感情と認知
次に紹介する症状は「否定的感情と認知」です。
これは、その名の通り、認知や感情に否定的な変化が現れる症状を指します。
具体的には以下のような事例が挙げられます。
- 外傷となった出来事の重要な局面を思い出せないー時的健応
- 興味や関心の大幅な低下・喪失
- 罪悪感などの感情の持続
- 配偶者・恋人・家族との関係疎遠
過覚醒
最後に紹介する症状は「過覚醒」です。
これは、緊張のために睡眠困難になったり、警戒心が強くなって強い不安を抱いたりする症状です。
怒りを爆発させたり、集中が困難になったりといった症状が該当します。
こうした症状以外にも、PTSDの人は「自分だけが助かり、他の人を助けられなかったことに対する強い罪悪感や無力感」を持っていることが往々にしてあります。
PTSDと合併しやすい疾患
次に、PTSDと合併しやすい疾患を一覧で紹介します。
- 抑うつ障害
- 双極性障害
- パニック障害
- 不安障害
- 摂食障害
- 物質使用障害
- パーソナリティ障害
- 素行症
PTSDの方と接するときに気を付けること
PTSDの方と接するときに気を付けることとしてもっとも重要なのは、心的外傷体験やそれを想起させる話題・場所には安易に触れないことです。
とはいえ、避けようとしていることが本人に悟られても、逆に想像させてしまいます。
また、PTSDの方は、刺激に過剰になっているケースが多々あります。
何げなく発した一言がトラウマと結びついてしまうこともあります。
その方の表情や態度から内面を察してあげることが必要なのです。
PTSDの治療法
最後に、PTSDの治療法について解説していきます。
基本的には、以下の4つが取られます。
- 心理療法
- 環境調整
- 薬物療法
- TMS治療
これらを複合的に取り入れつつ、カウンセリングを織り交ぜて治療していきます。
それぞれ特徴を見ていきましょう。
心理療法
PTSDの援助として、まずは症状や経過に対する適切な心理療法が挙げられます。
どんな症状が予期されるか患者自身が知り、改善への期待を育成することが重要です。
具体的には、以下のような治療が行われます。
- エクスポージャー:恐怖の対象となる対象に徐々に直面し、馴化させていく方法。
- EMDR (Eye Movement Desensitizationof Reprocessing):眼球運動を活用しPTSDを対象とした認知行動療法。心的外傷体験を想起しながら、治療者の指の運動を目で追うことで、弛緩状態を作り出す方法。
- 遊戯療法:遊戯を通して治療していく方法。子供の場合に採用されることが多い。
環境調整
次に紹介するのが、環境調整です。
環境調整は、ストレスの原因となっている環境を避けたり変えたり適応方法を考えたりといった方法です。
職場や家庭、学校、人間関係などが対象になります。
薬物療法
薬物療法も、症状に応じて複合的に用いられます。
具体的には、不安症状や抑うつ症状を伴う場合、SSRIやSNRIなどの抗不安薬・抗うつ薬を用います。
TMS治療
まだまだ研究中ではありますが、近年PTSDに対するTMS治療効果が報告されはじめています。
なかでも、以下のプロトコルによる改善報告が多く、今後の研究が期待されます。
- 右背外側前頭前野への低頻度刺激
- 左背外側前頭前野への高頻度刺激(うつ症状が目立つ場合により有効か)
PTSDにもカウンセリングは有効
今回は、生命を脅かすほどの恐怖と無力感を経験した際にさまざまな身体的・精神的な症状が現れるPTSD(心的外傷後ストレス障害)について解説してきました。
PTSDの症状は「再体験」「回避」「否定的感情と認知」「過覚醒」の4つです。
それらの症状に対して薬物療法や環境の調整もある程度は有効ですが、PTSDが生じたときの状況をまず言葉にすることから、根本的な解決につながります。
心理相談室セラペイアでは、カウンセリングの中で上記の心理療法を網羅したFAP(Free From Anxiety Program)という最新のトラウマ治療を行っており、PTSDからの解放に実績を上げています。
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